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①プロデューサーインタビュー

  • 辻 充仁(P.A.WORKSプロデューサー)×鳥羽洋典(アニプレックスプロデューサー)

『Buddy Daddies』はオリジナル作品ですが、最初の企画はどのような経緯で立ち上がったのでしょうか?

ちょうど自分が子育てをやり始めた所だったので、それをテーマに何かやれたらいいなという話を鳥羽さんに相談させていただいたのが最初でした。実は、今まで色んなプロデューサーにこの話をしても「子育て」の作品はビジネス的に難しいと言われてきました……。

自分は、最初から「無理」とは言わなかったですね。とりあえず、一旦持ち帰って考えてみますと。それで改めて「子育て」をエンタメにするなら…って考えると、昔、海外ドラマだと『フルハウス』というホームコメディがありましたけど、ああいう雰囲気を出しながら、子育てと縁遠い人たちが子供に振り回されて奮闘する話なら面白いかもと思って。さらにアニメらしいアクションも入れて考えると…、例えば普段は人を殺めてるような人間が子育てしたら面白いよなと。それって『レオン』や『パーフェクトワールド』のような感じかな?みたいな。そうしたら辻さんから、Netflixで配信されている『ポーラー 狙われた暗殺者』という映画が話題にあがり、ハードボイルドな男が子供を育てる話になっていったんですよね。

その作品の主人公が殺し屋のおじさんなので、彼が子育てするのをイメージしてみたんです。

でも「おじさん」だとキャラクターとしてビジネスにしづらいから、そこで僕はまたどうしようかと(笑)。あと、殺し屋だと自分が殺したターゲットに子供がいて、それを引き取るというパターンがよくあるけど、人を殺すような人間が自分の意思で子供を拾うといった流れを自然に作るのは、かなり難しいかな、と。例えば『レオン』の場合は、マチルダという少女が自分から殺し屋のもとに来ていることで上手く対応しています。けど辻さんは、自分の意思で考えて動ける年齢は嫌だって言うんですよ。もっと幼いほうがいいと。

やっぱり意思の主張が激しくなってくる幼児期の子育てはとても大変なので、年齢的にはそこに設定したいなと思ったんです。

そうすると展開的に難しいなと思ってて…、そんな時、別作品で下倉(バイオ)さんと会ったとき、雑談交じりで相談してみたんです。そしたら「だったらふたり組にすればいいんですよ」と。一方は子供を捨てて放っておくような男だけど、もう一方は逆の性格にして、そんな二人のやり取りや会話劇を間に挟んで引き取らざるを得なくなる状況を作れば、なんとかなるんじゃないのと。そこまで良いアイディアを出してもらえたので、下倉さんにも手伝って頂くことになった感じですね。それで、凸凹コンビの殺し屋が子供を育てるというド直級で行きましょうと。

そこから「バディもの」として本格的にスタートしていった感じですね。主人公たちの年齢も当初のイメージよりは若いけど、20代後半〜30代くらいまでは上げさせてもらいました。

あと、その男ふたりをお父さんとお母さん的な立場にすればいいと思ったんですよ。血の繋がらない子供を男ふたりが育てるって、価値観が多様化している現代的な話だから、これはいけるなと。「血の繋がらない家庭」と「同性のふたりが子供を育てる」っていうのは、どちらもテーマとしてすごくいいなと思いました。

いわゆる「バディもの」は主役コンビの描き方も要になるかと思いますが、設定作りで意識された点は?

基本的には気の合うふたりだけど、性格は正反対のほうがやりやすいので、そこをベースにしましたね。

一方は子育てのメインを担う事が多い母親の役割をするキャラ、一方はダメな父親だけど父親としての役割を担ってくれるキャラ…っていうところから、セリフとか性格を考えていきました。

面倒見のいいお母さんと、普段仕事はちゃんとするけど家に帰ったら何もしないお父さん。そのフォーマットを殺し屋に変換したという感じです。

ゼロから制作されるオリジナル作品だからこそ、個人的にこだわったところはありますか?

「子育て」というものをどう見せるか、ということですね。今回はどちらかというと、それを通して結果的に「家族になること」がテーマとしては大きいので。

(来栖)一騎は過去に愛を失くし、(諏訪)零は愛を知らないキャラクターにして、それが(海坂)ミリという子供と生活することで変化していく。そうしたふたりの変化を描いている部分が大きいですからね。

あとは作品のディテールとして、“子育てあるある”を盛り込むことですね。たとえば、男ふたりでどう保活(※子供を保育園に入れるための活動の)をするのか、男ふたりが初めて「子供用品専門店」に行ってどういうリアクションとるのか面白いよねとか、子供を乗せて自転車をこいでいるのが実は殺し屋です、とか。そういう細かいディテールでコメディ感を出せるのも、作品として面白いところになるなと思いました。

子育てのディテールを、よりリアルに…ということですね。

もちろんです。今回のスタッフは子育て経験者が多いですから。

ライターさんのなかにも経験者がいらっしゃるので、“子育てあるある”をふんだんに盛り込んでもらっていますね。

仕事中に保育園から熱出しちゃった知らせがきて「マジか。今から仕事(人殺し)なんですけど」みたいなシーンもあって。

主人公たちは基本的に子育て初心者なので、彼らがどう対応していくのか…っていうところが面白く見せられるんじゃないかと思いました。

そもそも立場上、彼らは日陰者で、誰にも相談できないですからね。

一騎と零はキャラクターとして、どういったところが魅力となりますか?

零は序盤ではあまり感情がなく、愛を知らない男ですけど、全12話を通して本当に繊細な変化を見せていくので、その変化を観ている人に感じてほしいなと思っています。彼が愛を知っていく姿から何かを感じてもらえると嬉しいですし、そこが魅力であり、見どころでもありますね。
一騎は零とのバディとしての掛け合いや、ミリとの親子としての掛け合いが面白いんですけど、そこでは一騎を演じる豊永(利行)さんの演技力の幅のすごさが楽しめます。こちらが想定していなかった芝居も突っ込んでやってくださるので、 本当に面白いですし、そこで一騎の魅力が増しているのを感じますね。

キャストのお話も出ましたが、一騎を演じる豊永利行さん、零を演じる内山昂輝さんはいずれもハマリ役ですね。

内山さんはほとんど御本人のまんまな気がしますけど(笑)、 豊永さんは当て書きで書かれたかのようなハマり具合ですね。ここまでうまくハマるのかと思ったくらいビックリしました。だから一騎には豊永さん、零には内山さんが被って見えるし、御本人たちが画面にいるような感じがすごいなと、個人的には思います。

今回のキャスティングは、オーディションで決められたのですか?

オーディションです。零はその前からなんとなく「内山さんっぽいよね」みたいな話が出ていましたけど。

雰囲気的なものや声とかで、結構そういう意見が多かったですね。以前、鳥羽さんとやったP.A.WORKSの別作品でも内山さんは主人公をやられて、大体アニメの現場って、前に主演された人を次の新作ではあまり使わないという流れもあるんですけど、今回は「やっぱり内山さんがいいよね」っていうハマり具合には勝てなかったです。  そんな内山さんのバディとなる一騎は誰がいいか…というところで、 決まったのが豊永さんでした。おふたりは10年くらい前の『絶園のテンペスト』という作品でもコンビを組まれて、その後も様々な作品で共演されて元々の関係値が高いところも組み合わせとしてよかったのかなと思いますね。

この作品に関しては、そういう部分も大事にしたいなっていうのが結構ありました。お芝居にちょっと生っぽいものを求めていたというか、限りなく本人に近いほうがいいと思っていたので。だから、キャラクターに合わせてもらうというよりは、キャラクターを御本人に合わせたいというのが本音でしたね。その辺り、内山さんはそうなることが見えていたので、あとは豊永さんもうまくハマれば…と思っていたら想像以上にバチッとハマりました。これはもう、ほぼほぼ本人がやっているようなものだねって(笑)。

豊永さんはP.A.WORKSの作品では毎回のようにオーディションに来てくださるので、いろいろチャレンジしたお芝居を見せたり、幅広い演技をされる方というのは知っていました。一騎というのはテンプレートなものに縛られない自由なキャラクターなので、その自由さに自由な演技をはめることができて、 引き出しがめちゃくちゃ多い豊永さんにはピッタリじゃないかなという思いがありましたね。P.A.WORKSとしても、やっと豊永さんと一緒にガッツリとお仕事できるキャラクターに出会えたなと思いました。

そういう意味では一騎に関しては、キャストが豊永さんに決まってから、初めて完成にたどり着いたキャラクターのような感じがしていますね。

物語の鍵を握る海坂ミリを演じる、木野日菜さんについてはいかがですか?

ミリのお芝居もかなり木野さん御本人に預けちゃっていますよね。

ミリは4歳児ということで、個人的には等身大のリアルな子供をアニメで表現したかったんです。だから、いわゆるキッズ向けアニメ的なセリフの言い回しや、テンプレなお芝居はやめてくださいと、オーディションの段階からみなさんにお願いしていました。できれば、ナチュラルな子供の演技をしてくださいと。そうしたなかで、木野さんのお芝居がいきなりハマったんです。その瞬間、思わず浅井監督と「この子だ」と顔を見合わせるほど。そのくらい素晴らしい演技をしてくださったので、もう簡単に決められましたね。

口調や声質にリアルな子供らしさを求めたということですね。

そうですね。リアルな4歳児に近いところを狙って演技してもらったのですが、木野さんは聡明な方なので、もう自分のものにしていましたね。アフレコも安心して見ていられるのでありがたいです。メインキャスト3人が揃っときは、本当に親子みたいな会話感が出ているんじゃないかなと思います。

最初に海外ドラマの話題が出ましたが、殺し屋稼業に関わってくるキャラクターたちの描き方も、やはり海外作品っぽさを意識されたのでしょうか?

それはかなり意識していますね。だから、キャスト陣のお芝居も全体的に生っぽいというか、リアルさにこだわっています。むしろ吹き替え作品に近い感じです。いわゆるクライムサスペンスのなかにコメディ要素がある本当にわかりやすい海外ドラマみたいなイメージです。僕なんかもう「これはJ・J・エイブラムス(※アメリカの映画・TVプロデューサーが作りそう!」と思いながらやっていますから(笑)。

逆にJ・Jにドラマ化してもらいましょう(笑)。

殺し屋が子供を育てるという海外ドラマが実際にあったら、十分あり得るネタばかりですからね。

では、おふたりが思う本作『Buddy Daddies』のイチオシポイントをお聞かせください。

バディの凸凹感あるやりとりですね。普段はクールな殺し屋たちが4歳児に振り回されているギャップとコメディ感。そこが観ていて一番楽しいところだと思います。もちろん先程話したようなテーマがメインにあって「殺しと子育て、仕事と家庭、どっちを取る!?」みたいな、そして最後はやっぱりそこに行き着くよね…というドラマ部分も見どころです。

その大人ふたりがミリに振り回されるところは、ミリのアニメーションもすごくかわいく描いているので、そうした動きによる面白さにも注目してほしいですね。あと、先程話した零の心情変化も丁寧に追いかけていってほしいなと思います。

ちなみに今回、辻さんのお子さんもスタッフとして参加しているんですよ。

画面に登場するミリが描いた絵を実際に描いてもらったんです。

ミリの絵はリアルな子供に描いてほしいよねって話していたら、そこにいるじゃんって(笑)。

子供は今6歳ですけど、描いてもらうのも結構大変なんですよ。さすがに全部は無理なので、ポイントとなる絵を主に描いてもらっています。

あのリアリティは、たとえプロのアニメーターでも、大人では出せないんですよ。子供に描いてもらうほうが、圧倒的に説得力がありますから。ちゃんとスタッフクレジットにも入っているので、どこで使われているのか楽しみにしていただければと思います。

最後に、本作に期待する方々に向けてのメッセージをお願いします。

本当に楽しく観られるコメディなので、あまり気負わずに観て頂くのがちょうどいい作品だと思います。30分間、気楽に楽しんでください。

個人的には、子育てに疲れちゃっている人がこれを観て「あ、私ひとりじゃないんだ」と共感して、安心してもらえるような作品になっていると思います。もちろんそういう人だけでなく、子育て未経験の人にも「子供っていいな」と感じながら観てほしいですね。