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⑩豊永利行・内山昂輝 インタビュー

  • 豊永/内山

ここまで『Buddy Daddies』を振り返ってみて、まず序盤の展開についてはどのように感じましたか?

第1話冒頭でのハードボイルド感あふれるアクションシーンから一転して、第2話以降ではホームコメディ的な展開になっていく。そうしたカラーの変化に興味を惹かれたというか、観ているみなさんも「これ、どうなっていくの?」という感覚になられたのではないかなと思いますね。

最初、殺し屋としてのミッションをこなすシーンから始まっていたし、そもそも殺し屋という設定自体、アニメならではのキャッチーな要素で、いろいろなドラマもありそうだったので、そちらの方に物語全体の割合が割かれるのかなと予想していました。でも豊永さんも仰る通り、話が進むと案外ホームコメディの要素も強くて、そこは僕にとってもインパクトがありました。

そこから回を重ねてきて、すっかり“家族”となった来栖一騎、諏訪 零、海坂ミリのエピソードで、印象に残っているところはありますか?

一騎と零が殺し屋であることは事実だし、実際にミリのお父さんを殺しちゃったりしているから…。

物語の始まりはかなり重かったんですよね。

そうそう。で、それに対して負い目を感じているふたりが子供を預かってしまい、「俺たちが育てちゃダメだろ」みたいな葛藤もあったのが前半の部分だったかなと。一騎はわりと早い段階から、子供を育てるということに関して前向きな姿勢ではいたんですけど、零も少しずつ価値観や考え方が変化していって…。「このままの生活が続けばいいのにな」みたいな気持ちにまで達したという意味で印象的だったのが、第8話とか第9話の辺りでしたね。

第8話と第9話は僕も印象的でした。第8話では零の実家に焦点が当たっていて、過去に零と濃い関係があったらしいキャラクターとの悲しい戦闘も描かれていたので、そこから第9話の運動会回にかけて、彼の変化が大きかったなと。当初は子育てとか、子供との同居にあまり乗り気じゃなかったはずの零が、ミリのために応援の声を力いっぱい叫ぶシーンはとてもドラマティックだったなと思います。序盤のアフレコでは、零は「抑制して」と演出されることが多かったので、運動会で「頑張れー!」と声を張り上げていたのには驚きました。でも、物語全体を通して、彼のこういうゆっくりとした変化の流れが描きたかったんだなと、そのときにわかりました。

では、一騎と零のバディ関係については、どのように感じていますか?

“バディもの”というのは作品のベースにあるんですけど、最初の方からミリが加わっているので、どちらかといえば“トリオ”の印象が強いんですよね。言ってみれば、ミリに振り回されるバディの物語という感じで。

一騎も零もそれぞれに重い過去やトラウマみたいなものを抱えているけれど、彼らは思春期とか成長過程に普通の子供が本来経験するようなことを経験してこなかったんですよ。そんなふたりが無邪気なミリに振り回されている構図は、もちろん戸惑いもあるだろうけど、やっぱりドラマが生まれやすいですよね。「そりゃそうなるよな」って感じるところがすごく多いですし。そういう意味では、3人の関係性のバランスって、めちゃめちゃ絶妙だなと思います。
あと、役者としてのアプローチ的な話で言うと、僕はだいぶ攻めた芝居をしているので、うっちー(内山)がたまに振り回されそうになっているかなと…。零は一騎と真逆のベクトルで作っていかないといけないキャラクターなので、いつも「うっちー、ごめんね」って(笑)。

いやいや、そんなことはないです(笑)。零が振り回される展開的には、むしろそれが面白かったですし。物語のバリエーションが豊かで、エピソードのカラーも毎回大きく変わるので、キャストとしてもアフレコしながらそれを楽しんでいました。視聴者目線も含めて考えると、観ている人を最後まで飽きさせない作りになっているなと感じました。

子育てエピソードをリアルに描いてもいますが、そういった点で印象に残ったところは?

ここまでの話数なら、やっぱり保育園に預けるエピソードとか。

保育園に持たせる物のルールとかディテールが結構細かかったですよね。

持ち物リストがね。

あれにもこれにも全部名前を付けなきゃいけないとか、そういうところに一騎が振り回されてしまうのが面白かったです。

あの辺はもう同じ経験をしてきた世のお父さんとお母さんたちが、一騎と零の姿を見て「そうそう、大変なんだぞ」って感じるんだろうなと。そういう視聴者のみなさんからのメッセージを一騎と零が受け取るような、逆の構図を生み出していますよね。第1話の展開からのギャップや意外性を、一番感じさせるところでもありました。あと、細かいところですけど、零が風呂場で寝ていたりとか。リアルのなかにあるファンタジー要素というか、アニメならではの巧いバランス感覚だなと思いましたね。

今回のインタビュー企画でスタッフ陣からは、豊永さんが演じる一騎、内山さんが演じる零について「当て書きのよう」との声もあるのですが、そうした反応をどのように感じますか?

僕らはオーディションで選んでいただいたわけですが、実際にやってみて、改めてそう思っていただけたのなら役者冥利に尽きますね。浅井監督をはじめとする制作チームのみなさんが、芝居に対しての間口を広くとってくださっているのも大きいのかなと思います。我々が変なアプローチとか予想していなかったアプローチをしても、それを許容して噛み砕き、精査してくれる器を持っているからこそ成立する部分もあるのかなと。

オリジナル作品って、キャスト側もどんな作品になるんだろうと思いながらやっていますし、おそらくスタッフサイドも、僕らほどじゃないにせよ、実際に走り始めないとわからない部分もあると思うんですよね。原作がある作品なら、作り手たちはそこに答えを求めることが多いけど、オリジナルだとアフレコで実際に声を聴いてみてキャラクターのイメージが完成していくこともあるだろうし。そこがオリジナル作品の醍醐味かな、と思います。

そう考えると、キャラクターの骨組をいただいて、そこにどんな肉付けをしていくのか試行錯誤できるというのは、やっぱり演じ甲斐を感じますね。キャラクターに自分の色がつくことによって、どうとでも転がることができる楽しみがあると同時に責任感も生まれてくるので、気をつけないといけない部分はありますけど。心の変化をきちんと回収できるようにしつつ、自分なりに変換したキャラクターをお届けしなければいけないなとは思います。

浅井監督と一緒にお仕事することはこれまでに何度かあったので、演出的な判断は、もう安心してお任せできますし、そしてこちらが収録でベストを尽くせば、素晴らしい映像によって僕らの仕事をそれ以上のものへ変身させてくれるという信頼があるので、不安は何もありませんでした。だから、完成した作品は僕自身も視聴者として毎話楽しみにしています。

『Buddy Daddies』はいよいよ終盤の展開に突入しますが、どんなところが見どころになるでしょうか?

第7話に一騎の亡くなった奥さんの妹・かりんが出てきて、零の父親が出てくる第8話があって…。

それぞれの過去が見えてきたわけですよね。

そのあとの第9話では、ふたりのミリに対する思いが段々とひとつになっている。でも、そうした“情”だけじゃなく、忘れちゃいけないこともあるよね…っていうところが浮き彫りになってくるのが第10話以降だと思います。実際にミリのことはどうするのか、3人の関係性は本当にこのままでいいのか。そこへ久ちゃん(九棋久太郎)の店に出入りしていた小木埜 了という殺し屋が関わってきたりします。本来の殺し屋の世界で、可哀想な境遇だけど明るく健気に生きているミリという女の子の処遇がどうなっていくのか。いよいよ、そういう話になっていきますね。

ここまでに散りばめられてきた要素が、どうまとまっていくのか…ですね。

本当にミリがどうなっていくのかを考えたとき、ミリにとっては血の繋がっている人もまだいるわけで…。その辺りとの関係性が、ひとつの鍵になっていく感じですね。

そういう意味では、終盤はかなりシリアスな展開もありますね。そのあたりは視聴者の方々の感想もとても気になりますし、そういったハードな要素も含んだ物語を『Buddy Daddies』らしいテイストで描いているなとも感じます。もしこれが違う雰囲気の作品だったら、同じような展開でも違う切り口になるかもしれないと思ったし。

ラストについては、おふたりとしてはちょっと意外な展開だったとか……?

この物語にどんな決着をつけるんだろうなと思っていましたけど、本当に最終回の台本を読むまで全然予想がつかなかったですね。

でも、浅井監督が今回のこういう結末にしたっていうことに対しては、作品を通して何を伝えたかったのかを自然と考えてしまうかも。

個人的には、結構意外な展開でした。

終わり方の部分に関しても、観ているみなさんがどう捉えてくれるのか気になりますね。たとえば、アニメで描かれたこととはいえ「リアルに考えればこうだろう」とツッコミを入れたくなる現実主義派の人って一定数はいると思うんです。そういう方たちに対して「事実は小説より奇なり」じゃないですけど「意外とリアルってこんなものじゃない?」っていう問いかけにもなっているのかなと。これを受け止められるのかどうかを考えるような終わり方になっているのかもと思います。

物語全体を通して考えると、“疑似家族”という一騎と零とミリの背景や関係性だけを抜き出したら、とても暗い雰囲気にもなりそうなんですよね。それをアニメというフィルターを通してオリジナル作品でこうやって描けるんだ、こういう角度でも捉えられるんだなっていうところは、自分にとっては新たな発見でした。

どういう形にしろ、意外には感じていただけるんじゃないかなと。あとは、各話ごとのエピソードも最後まで楽しんでいただければと思います。